文明の多系史観―世界史再解釈の試み (中央叢書)



文明の多系史観―世界史再解釈の試み (中央叢書)
文明の多系史観―世界史再解釈の試み (中央叢書)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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世界史的視野で見る日本の中世

村上泰亮は、日本の経験を世界史の中に位置づけようとする、普遍的志向をもつ学者だったが、他方で西洋の社会科学や歴史理論を、非西洋の経験を取り入れて、より公平なものに鍛え直そうと願っていた。

本書も村上のこうした関心を反映している。前半の議論は、西洋中心的な単系史観を批判し、多系史観を提示することを目指している。その議論の中心は、「有史宗教」と「大文明帝国」に特徴付けられる「第二次農耕文明」にあり、中国、インド、ギリシア・ローマの三つの第二次農耕文明の基本的等価性を説くことが眼目となっている。

後半では、これを踏まえて、ともに「大文明帝国」の周辺で封建制を発展させた欧州と日本の中世が比較される。そこでの議論はかなり専門的であるが、分析は明快かつ説得的である。二つの封建制の比較もさることながら、何故20世紀の日本と欧州で、中世が文明的アイデンティティーの故郷と見られるようになったのかについての分析も秀逸である。

村上の個々の主張の妥当性については、専門家から見れば、色々と疑問があるだろう。また、斬新な歴史の見方が次々発表されている今日からすれば、本書はむしろ古色蒼然とした20世紀の遺物だ、といえるのかも知れない。しかし、村上の壮大な比較分析は、読者に歴史を把握する大きな枠組みを与え、更なる探究心を刺激するに違いない。

また、本書を読んで私達の周囲を見渡すならば、カタカナ文字の開発プロジェクトの陰で忘れられかけている集落や寺社や雑木林が、実は武士団や農民、商人達が活躍した中世史の舞台であって、それが人類史の中でも一定の意義を持つことが見えてくるに違いない。歴史の舞台は、なにもイタリアの都市やフランスの古城、中国の陵墓に限るわけではない。それは我々の足元から広がり、それがそのまま世界に通じてもいる。そんなことを教えてくれることも、本書の大きな魅力のひとつである。

歴史をどう捉えるか

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